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あの日花を散らした南風が.1

休日に
海を見に行った




初めて降りた駅

行ったことの無い
初めての海岸だった





薄く晴れた
早春の日


三月のまだ寒い最中だったけれど

その日は
南からの風が吹き込んで


空気はぬるく暖かかった







白く輝く
波打ち際に


カップルや家族連れ

犬の散歩をしている人や
ランニングをしている人の


シルエットがある





僕は、

海岸線に沿って走る
国道から

階段を降りて


少しだけ砂浜に入ると



その人影を、目を細めて見つめた。






駅から結構歩いたせいか

少し汗ばんで


コートの
ボタンを外した



日差しは暖かだったけど
乾燥した風は冷たく


気持ちが良かった。
















僕は、


海を見つめながら
大きく息を吸ってゆっくりと吐いた





なんとなく疲れると

こうやって
海に来ることがある



何をするわけでもないし

長く滞在するわけでもない




ただ、少し見て

風に吹かれて
波の音を聞いて

それだけ


だけど、
お酒を飲むのとは少し違った

ストレス解消になる
ような気がする









足元の
漂流物を眺めながら

サクッと砂を踏むと


ポケットの携帯が震えた





画面にタッチして
耳に当てる

潮風とともに聞こえて来たのは


あくび交じりの、くぐもったキュヒョンの声





『もしもし・・・』

「おはよう。やっと起きたの、」

『わりぃ』

「もう午後だよ」





僕は呆れた声を出した


今夜、僕たちは
飲む約束をしていた



昨日の夜から
何度かメールを入れていたけど

寝落ちしていたのか

キュヒョンは朝になっても音信不通で



今はもう
昼も過ぎてだいぶ経っていた




「疲れてるなら、今日やめとく?」

『へいき、すげぇ寝たし。行きたい店あるんだけど、いい?』




キュヒョンはそう言うと
時間と店を指定して


僕は、

〝わかった、じゃぁまた後で〟と
電話を切った。






そうして、


携帯をポケットに入れて

また、歩きはじめる







お互い仕事が忙しくなって


実家も出て一人暮らしを始めて
頻繁に会うことは出来なくなったけど



それでもこうして
時間を見つけては約束をして

よく会っている








不意に



ざぁざぁと
波が寄せる音と共に


きゃー、と小さな子のはしゃぐ声が聞こえて


僕は視線を向けた



水際で遊ぶ小さな子供と

手をつなぐ母親の
シルエット





前髪を乱す風に
目を細めながら

僕はぼんやりと、その先の波を見つめた。









あの人と別れてからもう、


四年が経った






就職して四年、


僕はもう・・26歳で





高校生だった僕が
出会った頃の


あの人の年齢になった。



































































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2016-04-01 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 47 : トラックバック : 0
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あの日花を散らした南風が.2

階段に座って


缶コーヒー片手に
ぼんやりと海を眺めていた



まるまると太ったとんびが
きぃきぃと鳴きながら

空を旋回して飛んでいる


家族連れが浜辺で広げているお弁当を狙っているのだろう




飲み慣れた缶コーヒーの味が
なぜか、
いつも以上に甘く感じて


少しだけ飲んで、後はずっと握っていた






春は

いろいろな事を思い出す



あの人と終わったのも、この季節だったからか






いつか
別れる日が来るなんて

少しも想像なんてしていなかった




終わる理由など
二人には絶対にあるはずはないと信じていたのに


それはまるで
ある日一斉に桜の花が花開くかのように

予想以上に呆気なく訪れた。





きっかけなんて
今思えば些細なことで


なぜ乗り越えられなかったのかと
思うけど


あの時の22歳の僕には
どうすることも出来なかった。





東京で
希望の就職が決まった僕と

あの人の海外への転勤



あの人は
ついて来て、とは言わなかったし

僕も、一緒に行くとは言えなかった
行かないで、とも言えなかった。




〝仕事か恋か〟なんて
使い古されたネタで

自分たちが終わってしまうなんて
信じたくなかったけど


あの頃あの時の僕たちには
確かにその選択しかなかった。




海外じゃ簡単に会う事もできない

テレビ電話やスカイプが
いくら進歩しているとはいえ


離れていて
平気でいられるわけがない


抱きしめてもらえないなんて
匂いや体温が感じられないなんて耐えられない




だから、別れた

僕から
終わりにしようと言った。



大学の卒業を控えた、まだ薄ら寒い3月の始めだった。







恋だけが、

仕事だけが
全てなわけじゃない・・・



今の僕だったら

きっと、
違う選択ができただろうな・・・



ふと、

そんな不毛なことを
考えそうになって

僕は慌てて頭を振った


缶コーヒーを両手で握りしめる



後悔はしていない


手を離したのは僕の方だ・・・





あれは
僕の初恋で、


透きとおったガラスのように
特別で綺麗なものだったけど、

一方それは繊細で脆く


まだ幼かった僕は
守り方を知らず

自ら落として割ってしまった




だから後悔はない


けれど

心底、
好きだった・・あの人




あの人のような大人に憧れて
ずっと、あの人のような大人になりたいと思っていた。



せめて、

そうなれていればいいけど・・・




僕は
あの頃から少しは

大人になれたのだろうか・・・





































































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2016-04-04 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 30 : トラックバック : 0
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あの日花を散らした南風が.3

そうだな・・・


お酒の飲み方だけは
少しは板に付いたかもしれないな





その夜、

キュヒョンと二人
待ち合わせをした居酒屋で


キュヒョンがカウンター越し
追加のビールを注文する姿を見て

そんな事を思った




たった今まで寝てたみたいな
寝癖に無精髭のメガネ姿で

美味しそうにビールを飲むキュヒョンは


最初の一杯を一思いに飲み干すと
すぐに二杯目を注文した



「はぁーーうめーー。めっちゃ喉渇いてた」

「・・・あーぁ、オヤジくさくなったもんだな」

「なんだよ、同い年だろが」



はぁっと、
ため息を吐きながら

僕たちは笑った






キュヒョンは
大学卒業後、院に進んで

僕より2年遅れて就職した


てっきりそのまま研究室に残るのかと思ってたけど

昔からの夢だった
ゲーム会社に就職した


昼も夜も無く、仕事はかなり忙しい様子が伺えたけど

充実していて楽しそうだった。





僕はというと
ソフトウェア会社に就職した


今は、外の会社に出向して
その会社のシステム設計をしている


いつかは本社で開発とか
そういう仕事もしたいけど

場数を踏むのはいろいろ勉強になるし

出向先の人間関係は気楽でいい



ひたすら淡々と、コンピューターに向かう毎日だった



人と話すことがそんなに得意じゃない僕には
技術職は向いていたし

資格を取ったり
少しずつ技術を上げてスキルアップしていくのは面白かった。







「最近仕事どう?」



キュヒョンが僕に聞いた



「うん、順調。今の所が一段落したから、この春からまた出向先変わる」

「そうなんだ、どこ?遠いの?」

「ううん、普通に都内」


そうなんだ・・・と、呟いたキュヒョン



今の出向先での仕事が一区切りして
別の会社に移る

よくある事だった



「じゃぁ、辞める前にまたバタバタと告白ラッシュが来るな」

「無いってそんなの」



僕は苦笑いを浮かべた。



正直、実を言うと
僕の移動の噂が流れはじめてからというもの


好きだとか食事に行きませんかとか、
そういうアプローチはすでに何件かあったけど

あまりにもどうでもいい事で
話す気にもならなかった




「キュヒョンこそどうなんだよ、彼女できた?」



僕が聞き返すと
あからさまにキュヒョンは

嫌そうな顔をした



「出来るわけねぇじゃん、この忙しさで」

「出会いは?」

「無いよ」



そう言ってキュヒョンは
ビールジョッキをグイッとあおった



あいかわらず鉄道と
ゲームが好きで

少ないプライベートの時間は趣味に割いている

確かに、女の子の入り込む隙は無さそうに見えた



学生時代はそれなりにちゃんと
付き合ってた子もいたけど

社会人になってからは
そんなに長く続いた子はいないみたいだった



「もっとさぁ、私生活大事にしないと」

「それ、お前にだけは言われたくない」

「ハハ、だよね」



僕も、大概ひどい
自覚がある



僕は、ビールジョッキから
水滴が流れるのを

ぼんやりと見つめた




ーーまぁ、別にいいんだけどね・・・




僕はもう、誰とも付き合う気なんて無いから




















































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2016-04-07 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 20 : トラックバック : 0
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あの日花を散らした南風が.4

「まだ食える?」

「全然いける。チャーハン食べたい、あとは・・・」




真剣にメニューを見て
チャンミンは悩み始めた



いくつになっても
食欲はあいかわらずで

食べ物を選ぶ時に目がキラキラするのも、あいかわらずだった。



俺は焼酎グラス片手に

そんなチャンミンの横顔を
見つめていた





少し・・昔の話をしよう



俺がずっとそばで見て来た

チャンミンとユノヒョンの話だ。







チャンミンが
あの人と

ユノヒョンと、別れたのは・・・

大学卒業の少し前の事だった




暖かだった今年とは違い
その年は三月になっても雪の降る

寒い冬だった




俺は院試を終え
チャンミンも卒論を終えたばかりの

ある日、

久しぶりに会った大学のカフェテリアで
俺はその話を聞いた




俺が話を聞いたときはもう

別れたいでも
別れるでもなく

もう、別れた。・・だった





〝え、どうして、嘘だろ?〟と

当然ながら驚いた俺に

ユノヒョン海外に行っちゃうんだって、と
チャンミンは淡々と答えた。




「どうして?だって遠距離でも・・・」

「それは無理、絶対・・・」

「そんなやってみる前から・・、好きなんだろ!?」




思わず声を荒げた俺に対して
チャンミンの声はとても静かで

でも、揺るぎがなかった



「好きだから・・会えないなんて耐えられない・・・」



そう言った
チャンミンの顔を染めていた

カフェテリアに差し込むオレンジ色の夕日を
今でもよく覚えている




どうして
心が離れたわけじゃないのに

やってみる前に別れを決めてしまうのか、


それまでずっと
あれだけ仲良く

男同士というハンデすら
少しも感じさせないくらい強い絆を育んでいた二人が


遠距離になる
たかがそれくらいのことで

どうしてそんなにも簡単に別れてしまうのか


俺にはわからなかった。




「どっちから言ったんだ?」

「〝別れよう〟って言ったのは僕から」

「ユノヒョンはなんて」

「〝わかった〟って」

「それだけ?本当に・・・?」

「うん、だって。二人で話し合って決めたんだよ」




チャンミンは
そう穏やかな口調で言って

少し目を潤ませながら笑った



「本当にそれでいいのか?」

「仕方ない事だから」



まるでもう済んだ事のように
チャンミンは言った



けど、多分ものすごく深く、傷付いていて・・・



あんなに切ない恋の終わりを
俺は他に知らない。




































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2016-04-10 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 21 : トラックバック : 0
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あの日花を散らした南風が.5

〝本当にいいの、もう一度考え直してよ〟と、


俺からユノヒョンに
連絡をしてみようかと

何度、携帯を握りかけたかわからないけど



これは二人で決めた事で
部外者の俺が一体何を言うんだ・・・と、


結局俺は、電話をかけることは出来なかった。





ユノヒョンの連絡先は
一度何かの機会で必要になって

チャンミンに聞いて知っていたけど


そのとき以外、個人的に連絡を取ったことは一度も無い




チャンミンと三人で
何度もご飯を食べたし

よく一緒に遊びにも連れて行ってもらった


くだらない話もたくさんしたけど
就職や将来の相談にも乗ってくれて


そこらの大学の友達なんかより
よっぽど親しくしてもらっていたのに、




ーー俺ももう、あの人と会うことは無いんだな・・・・




遠くに行くのに

今までのお礼も
別れの挨拶もできなかった



友達の恋人なんて

意外とそんなもので。




俺も少し、寂しかったのを覚えている。














その後

卒業直前、大学では




チャンミンが長く付き合っていた恋人と別れた
という噂は瞬く間に広がって

女の子たちが
騒然とした



傷心のチャンミンにとって

良かったのか
悪かったのかはわからないけど、

チャンミンの周りは急に騒がしくなって

なんだか大変だった記憶がある。




最初に告白をしてきたのは
一個下の

ミスコンにも出ていたような
綺麗な女の子だった




〝・・でも僕、君のこと好きになれるかわからないよ〟




チャンミンはそう答えていたけど

それでもいい、というその子に
半ば流されるままに
付き合って



好きでもないのに・・・

多分それだけ、
ユノヒョンを忘れようと必死だったんだと思うけど。




でも結局、確かすぐに無理になって

あっという間に
別れてしまっていた






お互い環境が変わって
俺も全部を知っているわけでは無いけど

確かその後も、何人かと付き合っていた



チャンミンを見ている限り

付き合うというほど
ちゃんとした交際が出来ていたのかは

わからないけど。





俺は、

何があっても
全面的にチャンミンの味方だから


どんなカタチであっても
そうやって女の子と付き合って

前向きになれるなら全然かまわないと思っていたし


ユノヒョンを忘れられるような
新しい恋を早く見つけてくれることを

願っていたけど、




誰と付き合っていても
全然幸せそうじゃなく

忘れられるどころか


むしろどんどん寂しそうになっていく
チャンミンは

なんだか、見ていられなかったな。

















































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2016-04-13 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 18 : トラックバック : 0
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あの日花を散らした南風が.6

年度末の
忙しいさなか

突然実家から呼び出されて



その日僕は久しぶりに

地元へ帰る電車に乗っていた




下の妹の大学の卒業祝いに
田舎からいい肉が送られてきたから食べに来なさい、と

電話がかかってきたのだった。



家を出たとはいえ
電車で一時間もかからない距離だから

こうしてよく呼び出されるし、

僕自身忙しくて家事が面倒になると
帰ることもある


まだまだ実家に甘えながらの一人暮らしだった。






土曜の夜、
地元の駅に降りると

僕は、
甘いもの好きな妹たちにケーキを買って帰ろうと

駅の反対側へ降りた。



週末の駅前は
学生やサラリーマンがいないせいか
人通りが少し少ない



駅前の信号を渡って
アーケード商店街の洋菓子店に行く



閉店間際のケーキ屋のショーケースは
品揃えももうまばらで

残りわずかだった


そんなに派手なものは残っていなかったけど

みんなで適当に選べるように

チョコケーキやチーズケーキ
シュークリームやエクレアやプリンを注文して


あと、

ケースにぽつんと一個残っていた
苺のショートケーキを買った




ーーイチゴケーキ


あの人のせいで好きになってしまった




あの人の味・・・





こういう時にふと、思い出す。








当時、いろいろな人に迷惑や心配をかけたけど


特にキュヒョンには
多分、かなりの心配をかけていたと思う



あの人と別れた時はもちろん

その後、好きでもない子と付き合ったり
フラフラして
どうしようもなかった僕の事を

何も言わずにずっと見守っていてくれて
そばにいてくれた。


キュヒョンがいなかったら
僕はどうなっていたんだろう、と思う


本当に感謝している。





とはいえ

実はキュヒョンにも
言えていないことがあって・・・



秘密にしているというか
キュヒョンが勝手に勘違いしているというか

なんとなく言えないまま
タイミングを逃してしまったんだけど、




あの人と別れてから
僕は確かにいろいろな人と付き合って

大学の子や職場の人とか

いろいろだったけど、


その中には男もいた。




なぜか、
キュヒョンは当たり前のように
女の子だと思っているから

なんとなく言えなかったんだけど・・・


別の男の人とも
付き合ってみたんだ。





ーーいろいろあったよなぁ・・・・



若気の至りだな・・・・





思わず、黙々と下を向いて歩いた





アーケードの道の途中
あの人のマンションへと向かう横道に差し掛かって

僕はなんとなく立ち止まる。




あの頃、
頻繁に通っていたこの道


あれから何人とも付き合ったし
もう随分時間も経ったけど


結局思い出すのは、あの人との事ばかりだった




このアーケードを通ると
感傷的な気分になってしまうのは

きっと、思い出が多いから





場所に思い出を重ねて
引きずっているとか

そんなつもりは全く無かったけど




就職して二年後くらいだったか、

ある程度仕事にも慣れて
貯金も貯まった頃

家を出て

この街を離れて、


ようやく気持ちが吹っ切れた気がしたのを、
よく覚えている。




フラフラしたどうしようもない人付き合いも
止めることが出来たし

一人でいても辛くなくなった




あの人との思い出は
どれも大切で
嫌な記憶なんてひとつも無いけど


思い出が詰まったこの街から離れたことで


僕はようやく過去から
自由になれた気がしたんだ。


















































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九州のみなさん
どうか、お気をつけて・・・

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2016-04-16 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 26 : トラックバック : 0
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あの日花を散らした南風が.7

実家の僕の部屋は


母さんや妹たちの
いろいろな荷物が

ところどころに置かれていたけど


昔から使っている勉強机やベッドは
今もそのまま残っている。





その日、

家族ですき焼きをして
コーヒーを飲みながらケーキを食べた後、



部屋に戻った僕は

机に座って
少し窓を開けた。




涼しい夜風に


カチッと

机の上のスタンドをつける



蛍光灯の青白い光を点した





中学の頃から使っている
子供っぽい勉強机は

表面もところどころ剥げてボロかったけど


捨てられずにいる教科書や参考者が
今もまだ本棚に残って


高校受験や大学受験を
この机で乗り切ったという

愛着がある



ーー・・よく勉強したよな・・・・





この部屋にいると、


特に夜はなんだか

いろいろな事を思い出す・・・

















〝あなた、ユノさんと別れたの・・?〟





昔、ある夜


あの人と別れて
しばらく経った頃


母さんが突然僕に言った




〝え?〟




僕は驚いた。




ずっと隠してしていたのに

どうして付き合っていることに気付いたのか
いつから気付いていたのか

知っていたのならなぜ反対しなかったのか


別れたことにはなぜ気付いたのか・・・



いろいろなことが
ぐるぐると駆け巡ったけど

なんと言ったらいいのかわからず


その時僕はただ結局、
小さく〝うん・・〟と頷いた。



恥ずかしいような
申し訳ないような

ものすごい気まずさの反面、


知っていてくれたことに
どこかホッとしている自分もいて・・・


僕は言った




「海外に転勤するんだって」


「そうなの・・・」




母さんは小さく頷いた





「どうして・・、反対じゃなかった?」





僕がそう聞くと
母さんは

別に、手放しで応援できていたわけではないけど、

とこぼしながらも




「でも彼は、あなたにとても良い影響を与えていたから」




と、言った。



なんだか
すごく

泣きたくなったのを、


今でもよく覚えている。









僕はおもむろに

机の一番下の引き出しを開けた



卒業アルバムや
手帳や、

通知表とか

捨てられないものが無造作に詰め込まれた
そのずっと奥に

あの人から貰った指輪が入った
小さな箱がある



どうしても捨てられずにいる、指輪・・・



僕はその箱を取り出して

もうだいぶ錆びてしまっている
シルバーのリングを

手の上で転がした



さすがにもう
指にはめるなんてことはしない


ただなんとなく
じっと見つめる




未練なんて無い

ただ少しだけ
この胸の痛みが愛おしいだけ



自分の思い出もこんな風に

少しずつ、錆びていけばいいのに・・と思う。





その思い出だけで

多分僕は生きて行ける気がする。












































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テーマ : 東方神起
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2016-04-19 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 26 : トラックバック : 0
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あの日花を散らした南風が.8

翌日、

自分のマンションに帰る僕に
母さんは




「ちゃんとご飯食べなさいよ」




と、しつこいくらいに言った。





「大丈夫だって」

「好きなものだけじゃなくて、野菜を食べなさい」

「わかってるってば」

「今度お米送るからね」

「うん、わかったわかった。じゃぁね」




そう言って僕は
玄関のドアをバンと閉めて

母さんの言葉を断ち切った。




まったくもう・・・


母さんはいつも
僕の食生活の心配をしている



母さんにとって僕は
どれだけごはんのイメージなんだろうと思うけど


確かに学生の頃は

口を開けば〝お腹すいた〟〝ご飯まだ〟と
言っていた気がするから


まぁ、仕方ないか。









日曜日の夕方


空いている上り電車に揺られて
小一時間、



都心の、

しんとして静かな
一人暮らしの部屋に戻ると


僕は、ため息のように安堵のように

ほっと息を吐いた





1DKのマンション


そんなに広くはないけど
それなりに陽も入るし

駅にもコンビニにも近くて

便利で気に入っている



ベッドとテレビ意外余計な家具はなく

フローリングに
小さなパキラがひとつだけ置いてある

殺風景な部屋。



実家にはもちろん愛着はあるけど
僕にとってはもうここが

自分の家だった。






一人暮らしも二年も経てば
慣れたもので


仕事が忙しいときは適当にもなるけど
料理もしているし

洗濯だって掃除だってできる



実家みたいな快適さは無いけど

気付けば当たり前のように
一人で生活出来るようになって

困ることも無い



なによりこの自由は
とても気楽なのだということを知った





ーーいろいろと、変わっていくな・・・・







夜、眠る時


ゴソゴソと羽毛布団を
手繰り寄せながら

ベッドにもぐり込んで、ふと思う


どこからともなく聞こえる
車のクラクションや

かすかな人の声

街の音。



見知らぬ街の
こんな小さな部屋で

一人で眠りに落ちる自分は



もう本当に大人なんだな、と思う







けど一方で、

こうして実際に
26歳になったものの


それは、

小さな頃に想像していた
二十代の半ばの大人のイメージとも

全然違っていた




あいかわらずゴキブリは大嫌いだし

一人で飲食店に入るのは苦手で



大人になって

出来る事は増えたけど
あいかわらず出来ないことは出来ないままで



大人は・・・

思ってたほど大人じゃない
ということに気付いた








〝大人のくせに・・・〟



僕はどこかであの人の事を
そう思っていたかもしれない・・・



強くて優しくて
頼りになるあの人を

スーパーマンかのように
思っていたような気がする





どうして〝一緒に来い〟って強く言ってくれなかったんだろうとか

〝離れてても大丈夫だ〟って
どうして諦めずに僕を説得してくれなかったんだろう


どこかでそう思っていたけど




甘いコーヒーしか飲めなかったあの人・・・





ーーきっとあの人だって、そんなに大人じゃなかったんだ・・・






今になってようやく、

僕はそんなことに気付いたんだ。


































































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ポンジュース!


じょーじです
お久しぶりです



とりあえず一区切りです。

読んでくださって
どうもありがとうございます。



とりあえず、

いきなり破局していてすいません。


切なさ満載でお届けしております
パラレル新展開です。



ハッピーエンドの予定なので
そこらへんはご心配なく

チャンミンさんは可愛い学生さんじゃなくなってしまいましたが
きっとそこには

リーマン×リーマンという
新たな萌の予感が…



とはいえ、


大事な展開のお話なので
丁寧に書いていこうと思います。


幸せな展開はまだしばらく先になりそうです

のんびりとお付き合い下さい!



※次の話は、チャンミンが他の人とちょっとR-18!
無理な方はお気をつけなすって♪



あ、でも
お話のストックが少し貯まるまで
次の更新までちょっと間が空いちゃうかもなので

イラストで時間稼ぎ!
します!



お楽しみに♡






ではでは、
いつもありがとうございます(*^^*)


そろそろ暑い日もありますね。

サクレあげます!









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2016-04-22 : →あの日花を散らした南風が : コメント : 40 : トラックバック : 0
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そのままソファで寝ちゃうこともあります




ソファ1




こういう日もあるよね









ソファB











そのままソファで寝ちゃうこともあります

byユノ



的なこと
雑誌かなにかで言ってませんでしたっけね...





















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2016-04-26 : 子鹿たちのえ♪セカンドシーズン : コメント : 19 : トラックバック : 0
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ももまんにキッス




ソファ3




こんなチビたちのように

のんびりまったりしたいです







最近、


長かった髪を
がっつり切って

パーマをあててみたら

ちょっとヒチョルみたい、と言われ



うれしくなりました。




髪型だけですけどね…フフ










hityo.jpg






































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2016-04-30 : 子鹿たちのえ♪セカンドシーズン : コメント : 28 : トラックバック : 0
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プロフィール

栗尾ジョージ

Author:栗尾ジョージ
チャンミン御出演!「黄金を抱いて翔べ」
公開翌日の2012/11/4にめでたく開店です!

ファン歴はやっと1年くらいです。

ユノさんに恋していますが
なんだか可愛くて仕方ないのはチャンミン君です(笑)

まったりマイペースですがよろしくお願いします!

◉そこかしこに出てくる写真、
『卓上ラブラブ東方神起シリーズ』は
友人からの頂き物です♪ありがとうございます☆


こちらからどうぞ♪

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